歌:吉永小百合
作詞:曽我部博士
作曲:曽我部博士
野麦峠、飛騨の山なみの中でもひときわ
高い乗鞍岳と御岳の深い山あいを縫うけ
わしい峠道。明治から大正にかけて昔の
飛騨の女子衆は、みんなこの峠を越えて
糸ひきに行きました。
野麦 野麦峠 越えて
あねさどこ行く あねさ
あねさ 糸ひきさ
あねさ信州の きかやで
糸ひき一年 はたらいて
いとしいかかさの 顔みたや
とんと とんと えーえ えーえ
顔みたや
「辛抱せにゃだちかんよ」かかきまの声が
まだ耳に残っています。寒さと飢えと恐
ろしさで泣き泣き歩くまだほんの十二・三
のちいさな糸ひきさもいました。雪に足
を滑らせて目もくらむような谷底に落ちて
いった糸ひきさもいます。女子衆は皆の
帯を解いて何本も結びあわせ、助け綱に
してやっと助けあげました。でも、どうに
も助からなかった糸ひきさもいます。だん
だんか細くなっていく泣声がいつまでも
野麦峠の山あいに響いていきました。
山は 山は吹雪 吹雪
ふりかえれば 飛騨は
雪に けむる
お高租頭巾に 手甲脚絆
つまかけ草軽を きりりとしめて
雪は 野麦の峠みち
山よ 山よ えーえ えーえ
荒れるなよ
野麦 野麦峠 越えて
あねさどこ行く あねさ
あねさ ふるさとさ
飛騨ブリャ 山越え 越中から
糸ひき あねさは 信州から
年とりまでに 早うもどれ
あねさ あねさ えーえ えーえ
早うもどれ
あねさ あねさ えーえ えーえ
糸ひきさ
いまも峠の道には名も知らぬ白い野の花が
いつかこの野麦峠を越えていった
糸ひきさのこころのように
――――遠い遠い空をみつめています。
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